アメリカ大陸では、カウボーイの携帯食として6〜15時間、場合によっては2日間もの間、木の葉や土に包んだ食べ物を低温で蒸し焼きにする方法があり、南西諸島では今でも行われています。また日本でも古くから蒸気の温度を下げた低温蒸しで柔かな美味しい食べ物にする工夫がありました。このようなスチーミング調理は、食物の酸化を最小限に抑え、栄養価や旨み成分を閉じ込めることができる最も効果的な加熱法です。現在一般的に行われている給食や弁当、総菜などの大量調理の現場では、安全のため熱加工は過剰な傾向にあります。そのため、素材本来の美味しさや栄養価の低下は避けられません。しかし良質で安全な食物をつくるには、素材の持っている組成を最大限に生かした加工を行う事こそ本質的意味があるのではないでしょうか。スチーミング技術は発展し、100℃以下の温度を自由に作る機器の開発が行われ、低温スチーマーが誕生しました。効率的で素材に優しく、栄養の損失も少ないため、今までにない素材の旨さ、美味しさを活かせることになります。また、材料の廃棄部分が減り、水の使用量も減るという驚くほどの省エネルギー効果もあるのです。冷えて時間がたっても、温めれば柔らかく美味しくなり、日持ちも良くなります。低温スチーミング調理は古くて新しい調理法といえるでしょう。早く効率的に調理することがよいとされている概念に一石を投じることになればと思います。
 

スチーミング調理技術研究会
          平山 一政