人間は食物に火を通して食べる美味しさを識った唯一の生き物であったが近年はペットも仲間入りした。なぜ食物に火を通して食べるのか、今改めて考えてみると常識的なことも曖昧な事が多い。食物に火を通して食べる方法は人の歴史と共に、美味しい食べ物をつくる料理法として、それぞれの地域で発展してきた。料理とは『食べ物を煮炊きして調える』と解説されるが、素材にお火を通す事に重点が置かれており、美味しく食べものを用意する上で熱は欠かせない問題となっている。ではなぜ『食物に火を通すと美味しくなる』のか、そしてこの単純素朴な疑問はどんな事を意味しているのか。別の視点では・食材を採取し調理を行い料理に仕上げる段階を科学的に考察して見ると、素材の本来持っている組織と成分が大きく変化する工程は熱工程にある・その意味するものは、もし熱の通し方が良くなければ素材本来の特徴を活かせず、美味しいを十分に出せないままに食べている事になる。この事は料理や加工食品における加熱の重要性を意味している。熱加工は食物に対して最善な状態で行われているだろうか。最近は安全対策、特にPL法、HACCP対策の面から熱加工は過剰気味な傾向にあり、素材本来の美味しさ、栄養価は低下を避けられない状況にある。良質で安全な食物を作るには、原料の本来持っている組成を最大限に活かす事こそ、その本質的意味がある。
『食物と熱加工』この視点から料理や食品加工を改めて見直し、効率的熱加工法であるスチーミング応用が進み、やがて食品加工の分野に広がり、そして調理の世界へ、さらに家庭の調理法にまで展開しようとしている。低温スチーミング調理法は単なる蒸し物調理法ではなく、過去から続く現在の調理法に変革を迫る意味合いを持つものである。低温スチーミング調理法に至った経緯について解説してみたい。
料理は材料に火を通す事に大きな目的がある。その火を通す方法として、煮る、茹でる、焼く、炒める、揚げる、蒸す、炊く、燻す等々、最近では高周波、レーザー、遠赤外線、さらに熱作用と同じ作用を得る加圧調理法がある。これらの調理法を穿った見方をすれば!
1.焼き物は直接高温の熱が素材に触れ、火が通り焼目が付く間、水分を蒸発させ、脂肪をとかしドリップを滴化させ、強制的に酸化させ、乾燥しているように見える。冷えれば固くなるのは当然である。
2.揚げ物は高温の油の中で、火が通る間、素材の水分やドリップは油の中で抜け、蒸発して行く、その水分等は油を酸化させ痛める作用をして行く、焼物と同様である。
3.煮る、茹でるも、水を熱媒体とし、素材の温度を上げ、調理を行う間、素材の持つ旨味成分が水中に流出し、場合により組織に水分を吸収し、そのものの旨み、美味しさを失う事になっている。
4.中華料理で多く使う高温の油で炒める方法についても、熱加工の視点から見れば、合理的な方法とは思えない。素材に熱を伝え美味しく食べる条件が出来、仕上がった直後にすぐ食べる料理の1つならばともかく、まして時間を置いて食べる料理、大量の調理品ならば、もう少し工夫した熱加工の調理方法を応用すべきと思える。それぞれの調理を行う場合、素材に最善の火が通っていれば、焼物は表面に焼目を付けるだけで良く、揚げる場合には衣に色が付けば仕上がり、煮る場合には素材の柔らかさを出し、味が浸透すれば良い事になる。炒める場合にも油を絡め表面を炒める程度で短時間に終わる。素材を最善な前処理を行い、旨味、美味しさを最大限に引き出して置き、目的の料理、食品に仕上げる方法を採ったらどんなメリットが生まれて来るのか、料理時間や手間、さらに調理場はどの様に変わって行くのか、材料の歩度まり、貯蔵法にも変化が生じるかも知れない。
種々の熱加工の中で、最も効率的で熱伝達が良い火を通す方法は、水蒸気で食物を包み熱交換する方法、つまり、”蒸す”方法である。最近はスチーミングと呼ぶようになった。温水や熱水を使った加熱法よりも蒸気で直接加熱する方法は熱伝達が早く最も効率的な方法である。調理や食品加工の業界では、温、熱水加熱の方が早く、効率が良いと誤解されている方々が今でも大変多い事に驚かされる。『蒸す』方法は、古来からある『セイロ蒸し』が知られている。セイロの中に食物を入れ、下から蒸気を送り、充満させ、余分な蒸気は蓋から逃しながら蒸しを行う。お餅、おこわを作る時にもち米を蒸す場合に多く使われ、その温度はほぼ100℃となっている。セイロは蒸籠と書き、本来は食物を籠に入れ釜に吊るした様にして蒸す方法を表す。蒸し器も様々に発展し、その1つに蒸し器を竹で編んだ籠状にし、自然に蒸気が抜ける状態で蒸す方法がある。中華せいろはこの方式であるが、送る蒸気を弱くすれば蒸し器の中の温度は下がり100℃以下になる。また、酒造りに用いられた甑(こしき)や大豆を蒸すのに用いられた蒸し器の場合、蒸し器の蓋にシートをかぶせ重しを載せ、圧力を掛け温度が高くなる蒸しを行って来た。
1、この様に、蒸すと言えば一般的に100℃で蒸すものとして来た。
2、密開形の蒸し器を使い、蒸気の圧力、温度を高めて蒸す『高温蒸し』がある。
3、蒸し器の蓋に逃がしを付け、また蒸籠の蓋網から蒸気が自然に漏れ、内部の温度が
上がらず蒸す、『低温蒸し』の方法がある。その1つに昔、行われていた茶葉の蒸し方法、また一部の調理人が経験の中から工夫し火力を弱め鍋の蓋をずらして蒸す方法がある(70℃〜90℃)。
こうした3つの方法は調理や食品加工の単なる熱加工の1つであった。
蒸す方法は安定した温度で空気の無い空間で食物に熱伝達が行われ、旨味成分を閉じ込め、
酸化作用が進まず、低温蒸しの場合、多少空気が混在しても酸素の割合は低く、褐変、酸化作用は他の加熱方法に比較すると極めて低く抑えられる。この優れたスチーミング加熱法を、単なる蒸物に使うばかりでなく、前述1)の焼物、揚物、煮物、炒物等の前処理に使用したらどの様になるのか。素材の特性を活かした温度で火を通しておけば最終的調理作業は時間が短く手間も簡単になる。低温蒸しした素材を調理すると、今までに知られていなかった現象が数々あらわれて来る。
素材はより活き、美味しくなり、体に優しい健康的な食物を作る調理技術に発展する。では、なぜ低温スチーミングは良いのか。
スチーミングの熱伝達は、食物を蒸気で包み、表面は薄い水の被膜に覆われ温度上昇して行く。
水分蒸発はないが、素材に含まれる成分の内、揮発性の脂肪酸等は放散蒸発し、素材に含まれる自由水や低い温度で融解する脂肪分、水溶性タンパク等はドリップとして流出滴下する。素材の旨み、美味しさを作る多くの成分、特にタンパク質、脂肪分等、そして細胞間の結合水は可能な限り良質な状態に変性させ、ドリップの流出を防ぎ、閉じ込める。美味しさを阻害する成分、悪臭の原因を作る成分、消化吸収、栄養価の点から見てもマイナスとなる成分は抜けてくれたほうが良い事にある。この事は加熱温度が重要な意味を持っている事になる。
あらゆる素材には美味しさや消化吸収を阻害する成分が含まれている。あく、悪臭、ぬめりを生成する成分、揮発性の脂肪酸、肉、魚介に含む血合、自由水等がそれである。揮発性成分は熱により素材から放散する時に空気と結合し、あくに変わると考えられる。揮発放散した成分、特に高度不飽和脂肪酸は空気と結合し参加し易く、温度が高くなるほど酸素の付加量は増え過酸化物を作る。低温スチーミングは空気が残存するが、酸素の量は少なくなり、結合は少なく、あくの問題は殆ど考える必要が無くなる。程よいあくは美味しさを作る味の一部である事を実感する。
より良い、美味しい食物を調理するには、加熱法の再検討、見直しが必要であり低温スチーミングを必要とする原点がここにある。良い低温スチーミングをどうして作ったら良いのか!
一般的概念に、水蒸気は100℃から発生すると考えている方々が多い。
水蒸気は0℃の水からも発生する。0度の水蒸気は、絶対圧力0.006228/ 熱量597.50Kcal/Kg 比容量206.305/Kg
100度以下の温度による直接蒸気加熱を『低温蒸し』と呼ぶが、誤った意味に聞こえる場合があり、中温蒸しと呼ぶのが良いのではないかとする意見もある。現在行われている低温スチーミングと呼ぶ方法には3つの方法が採られている。
1.100℃以下の温度を純粋な蒸気だけで安定して作るには、蒸気空間の気圧を下げる必要があることが分かる(表2より)
従って装置には気圧を下げる減圧機器を取り付け減圧し、蒸気をコントロールし温度を一定にする。アメリカでも低温蒸しが注目され普及が始まり、この方式の装置が開発され販売している。この最大の問題点は、減圧のため内部の空気を吸引し続けるため、素材の香りの成分まで吸引してしまう事である。香りは美味しさの大きな要素である。
2.装置の中に蒸気を入れ、ファンで撹拌しながら供給蒸気量をコントロールすれば内部を任意の温度に一定する事が出来る。近年、ヨーロッパから導入されたスチームコンベクションがこの方式である。オーブンにスチームを入れ、撹拌しながら任意の温度にして低温スチーミングを行うとするものである。この方式の問題点は、当初あった空気もそのままに熱を撹拌するので空気温度は上がり水分を奪う現象が出てくる。もう1つの問題は高温空気は食材を強制的に酸化させ、特有の匂いが付く事である。調理のレベルは限られたものになる。食物をパックし加熱するのであればスチーム空間の空気は関係なく加熱する事が出来る。
3.日本で生まれた方法であるが、蒸気と空気の比重差を利用し、自然に100℃以下の低温のスチーム空間を作る方式である。蒸気を入れる空間の上部を塞ぎ、緩やかに蒸気を入れると空気は自然に下方に移行する。その原理を利用して、温度を一定にする。供給蒸気を穏やかに適切に注入し量をコントロールすれば安定した低温スチーム空間を作る事が出来る。原理、機械的構造もシンプルになり、スチーム空間に食材を下方から搬入するリフトアップ構造にすれば運転中の蒸気放散は全くなく、食材の出し入れの際に生じる蒸気の放散も極めて少なくなる。この方式はバッチ方式であっても必要温度になっている空間に搬入するため連続方式と同様な効率化が達成出来る。これは日本のセイロ蒸し技術を発展し開発された低温スチーミング技術であり、とくにトンネル型連続蒸し機の改良を進める段階に生まれたシステムである。実際にデリケートな各種の調理を行い比較を行って見ると、最も優れた低温スチーミングシステムは3、の方式であると考える。素材に対し、最も美味しくなる加熱法を追及していると、原点の食物を加熱する理由を改めて考えて見たくなる。
食物は素材を生で食べるか、又乾燥して食べる以外には、何らかの熱を加え、調理して食べる。食物に火を通して食べる唯一の生き物は人間であった。ではなぜ火を通して食べるのか・・その理由はなzせなのか!
1.生よりも火を通したほうが美味しくなる
2.柔かくなり食べやすく吸収も良い
3.付着した菌の虫を死滅させる
4.食物の酵素の働きを止める
これが食物関係の書物に書いてある火を通す大きな理由である。常軌つの目的や理由ばかりでなく、もっと多くの熱の働きや作用があると考える。目的や作用を分解して考え、その本質的な事を改めて考えて見れば、熱の働きや作用は予想外に多く、ある特徴を出すために行った熱加工が、結果として素材の別な特徴を殺す反作用が生じている。熱加工は素材を構成する組織や成分、性質に対して複雑的な作用を行う。例えば焼く事は、香ばしさを出すために行うが、火を通る迄に結果として脂肪分は溶け、ドリップとして滴下し身は固くなる。揮発する脂質は最初に酸化しあくに結合する。別な面から見れば強制酸化を行っている様にも見える。美味しさを邪魔するあくの結合を少なく、酸化褐変を少なくする焼き方はどんな方法が良いのか、何気なく行う焼物もこうした視点から考察すると疑問な点が多くある。加熱目的に対して、理想的に作用を達成するにはどんな熱を、どんな方法で与える事が、素材を活かし美味しさを作る事になるのか、それぞれの働きや熱作用の温度を考えてみる必要がある。
数多くある熱作用の内、素材を活かし、旨味、美味しさを作る熱の与え方とその温度はどのような温度であるか。表3の内2、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、17,19、21、26、等は美味しさを作る上で極めて重要な熱作用であるが、その理想的熱作用の温度は13の焼く事、高温菌の死滅を除いて予想以上低い温度となる。殆どが100℃以下になってしまう。
表3 加熱目的、熱作用や働きを考える
1)酸素を失活させる | 18)脱水、水分蒸発、乾燥 |
2)酸化を止め、褐変を防止する | 19)細胞の結合性を下げ分解、ほぐれを良くする |
3)細菌、寄生虫を死滅させる | 20)表皮の分離性を良くする。皮剥ぎ(ピーリング) |
4)蛋白質を凝固させる | 21)弾力性を高める、硬化、固化させる |
5)澱粉をアルファ化させる、糖質化させる | 22)融解、混合及び融合を良くする |
6)活性酵素を働かせる | 23)膨化、膨張、膨潤させる |
7)肉質を柔らかく、歯切れ、食感を良くする | 24)酸化を促進させる |
8)消化、吸収を良くする | 25)縮小、シュリンクさせる |
9)栄養価を高め、多く保存する | 26)水分、調味液を吸収、浸透させる |
10)臭気、揮発成分の放散(脱臭、消臭) | 27)含有成分の分離抽出 |
11)色調、艶を良くする、色だし | 28)発酵させる、発酵促進 |
12)素材の香りを出す、良くする、香りを付ける | 29)あくだし、あく抜き、渋だし、渋切 |
13)焼く、焦がす、炙る、いぶす、燻煙、炒める、煎る | 30)煮詰める、濃縮する |
14)素材を熟成させる | 31)成分を結晶させる |
15)脂肪分の溶解、水溶性タンパク質の抽出(エキス) | 32)保存、温蔵 |
16)ゼラチンの分解、ゲル化力の低下 | 33)脱気、その他 |
17)自由水、遊離水など水分の抽出、流出 |
一般的加熱の必要温度は、酵素失活、褐変防止、蛋白の凝固、肉質の軟化、色出し、一般細菌の殺菌などをもくてきとした温度は最高80℃で十分クリアーする。穀物などの澱粉の糊化は90℃前後である。焼き物の温度は300℃を超える場合もあるが、揚物の温度は140〜200℃であり、それは素材の表面に接する温度であって、内部の温度は60℃〜80℃にて終了する。焼く、揚げることを別にして、食物に火を通す最適温度は一般的認識温度よりも低い温度が良い事が分る。ここで注目したいのは14の素材の熟成である。素材そのものが熟成し美味しくなる作用は調理の作業の中であまり考える事はなかった。熱加工は出来るだけ手早くする事が調理や加工時間を短くさせる事として加熱温度を上げ必要温度との温度差を大きくし効率化を図る考えが第一であった。種々の素材を低い温度で低温スチーミングを行っていると素材の状態からは考えられない様な旨味、甘さが出て、美味しくなる場合がある。野菜を糖度で比較すると1〜4度もの向上があり、肉、魚も共通する。旨味の凝縮である。加熱の目的に酵素を失活させる事も重要な意味があったが、逆に酵素を最大限に作用させる温度があっても良いのではないか、つまり酵素活性である。
その活性が最大となる温度は失活する直ぐ下の温度帯にあるのではないか。もう一つ、素材の繊維質、筋が柔らかになり、場合により無くなった様な剪断性が生じてくる。今まで美味しい料理には使えなかった素材がより美味しくなり、歯切れの良くなる場合もあり驚く事が多い。今迄の常識的な調理熱加工の方法について考えなおす必要性を感じる。これは学術研究機関の今後のテーマとして研究をお願いしたいものである。試食テストを行えばよく理解出来ると思う。
調理の段階で素材に調味料を浸透させる必要がある。これは調味液に素材を浸漬して置く方法と煮る方法が採られ、煮る場合は調味液を沸騰させ圧力の差によって浸透させる、浸透圧方式が一般的である。もう一方で調味液と共に加熱したものを一緒に自然冷却すれば浸透が良くなる事を経験的に知っている。ものは加熱すれば膨張し、冷却すれば収縮する。この物理的現象を利用し、素材をスチーミングにより加熱し、素材と調味液を適度な温度差に保ち、浸浸しながら温度を下げれば、極めて良い状態で調味料が浸透する事になる。素材その物の風味が活き、煮崩れする事も無く、食感が向上し、調味料の香りも生き、しかも短時間に作業は終了する。調理の内容により、素材を生の状態で調味液に浸漬し、下味を染み込ませる方法を採るが、こうした方法よりも適切なスチーミングを先に行い、それから調味液に浸漬する方が浸透も良く、素材の風味が生きて来る。素材の風味、調味の美味しさは、舌で感じるよりも、口から鼻に通じて感じる香りが何よりも大切である。その香りは熱により極めて大きな影響を受ける。沸騰させ調味を行うのは香りを飛ばしながら味を浸透させる方法の様にも見える。
近年、スチームコンベクションと共にもたらされた調理技術に真空低温調理がある。素材組織や成分を出来るだけ破壊せず、熱変性させ日持ちの良い、良質な食物を作る技術として導入してきたものである。ところが実際に取り組んだ方の中には、特定な料理には良いが、不十分なものと評価せず、中断してしまった方々も多くいる。過去に行われてきた真空停滞調理法が停滞したのは3)で説明したが、素材を生の状態で密閉し加熱すると、素材に含まれる好ましくない成分も閉じ込めた状態で加熱が続けられ、その成分の悪変により、全体を汚染し、ある特有な味、臭気が付いてしまう事である。最初に素材のあくを生成する成分、揮発性脂肪酸などを除去し真空加熱すれば全く美味しさの違った食物に変わる。素材をそれぞれ適正な温度でスチーミングを行い、特に熟成効果を最大限に活かし調味液と共に適正な温度で加熱すれば殺菌と同時に煮熟が行われる。真空包装後の殺菌も低温スチーミングにより行う事が出来る。真空についてあまり拘る事なく、空気と接触しない脱気の考えに立てば、湯気のような蒸気を包装空間に入れてひゃしても比較的簡単に脱気容器の加熱が出来る。低温スチーミングと真空、脱気低温調理法と組み合わせる事で、今までとは全く異なった調理技術となり、新しい食物、調理品が生み出されて来ると思われる。
煮る方法は食材を調味料と共に鍋を用いコンロに掛けて行うのが常識である。
量産の場合は大型の蒸気による間接加熱方式のジャケットパンを利用して行うことが多い。
煮る事は火力の調節が多少雑でも沸騰点は一定であり失敗は少ない。よく考えて見ると煮ることも100℃で行う事が本当に良いのだろうか。もし低い温度が良いとすれば、温度調節付鍋を作れば良い事になる。事実大型のジャケットパンには温度調節付きのものもある。煮る作業を見ていれば分る事だが、水面から蒸発が行われており時間が長ければ中の液は濃縮と同じ作用となっている。また別な角度で見れば水面は常に空気に触れ酸化作業が行われている。これは小さなたいして問題とする程の事で無いかも知れない。しかし美味しい料理、食品を作る上で微妙な違いが生じるのであれば考えて置いても良いと思われる。一般的にはスチーミングによる煮物を行う考えが殆どないと言って良い。調味液と食物を容器に入れ70℃〜90℃の温度でスチーミング加熱を行う、当然の事ながら室内は湿度100%であり蒸発は行われない。長時間の加熱でも濃縮、酸化が生じない、さらに温度を抑える事で香りが明らかに良いのである。何とも表現が難しいが、円やかな美味しさと香りの良さは検討に値する調理加工法と言える。
スチーミング調理法の応用で評判の美味しい料理や食品が続々生み出され、従来の調理法に無かったスチーミング応用で作り出されている食品も数々ある。
1、その1つに切干大根、ヒジキ、おから等の煮物、キンピラごぼうがある。これらはお鍋で炒めながら調理し、煮上げる方法を採る。蒸す事は全く関係のなかった調理法である。素材をそれぞれに適正にスチーミングを行い、調味液と共に煮上げるか、真空包装して殺菌を行い仕上げたものを是非食べて貰いたいものである。ふっくらと膨らみ、さくりと歯切れの良い食感を味わって欲しい。是非老人や子供達、病気の方々に食べさせて上げたいものである。おからを廃棄するなんて本当に勿体ない話である。
2、健康食の1つに海藻類がある。通常、調理して食べるものは殆ど乾燥したものを使う。最近は生の海藻も店に並ぶ様になった。乾燥したものは勿論、生のものも実際には浜で茹でたものである。旨味はかなり流出している。海から取れ立てのものを低温スチーミングし、調味したものを食べて貰いたいものである。その風味、美味しさは感激的なものである。多くが捨てられているワカメの茎も柔らかに本当に美味しい惣菜になる。素材を採取し加工、流通まで考え直す必要性を感じる。
3、ハンバーグは一般的にひき肉にタマネギのみじん切りを炒めたもの、パン粉その他の材料、調味料を混ぜ成型したものを熱板で焼く。量産の場合、成形したものを蒸し、冷凍し、使用する前に解凍し、熱板で焼くのが普通。スチーミング調理法ではひき肉に入れる副材料も低温蒸しを行い、特に低温蒸しのニンニクは匂いが抑えられ、特有の旨味を作る。さらに成型したものを一般的には考えられない低い温度でスチーミングする。肉は甘みを感じる程、美味しくなり(熟成効果)柔らかな
食感が得られ、ニンニクの旨味と絡み合い、後を引く美味しさになる。
4、春雨は茹でる、又は熱湯に浸し戻し、水洗いし、水切りした後、サラダ、酢の物、炒物、中華料理、スープ料理などに使うのが常識である。春雨を水で時間を掛けて戻し、それを低温で蒸す。蒸し上がりは麺線は簡単にほぐれる。これで作った春雨料理は何とも言えず美味しく、特にプリプリした食感は評判となっている。もっともっと紹介し試食して貰いたい。新しい料理法による、食品が沢山ある。