当方では低温スチーム管理、加工技術の研究、普及活動を続けておりますが、研究活動の中で思わぬ、現象を発見 する事になりました。 それは野菜、果物。花卉の鮮度保持が長くなり、再生が簡単に出来る方法です。 その応用は流通、農業分野に、また飲食、一般家庭にもすぐ役立つ方法になると思います。

1、発見の経緯

あらゆる野菜、果物等をスチーム加熱し、美味しく食べる工夫をすると、品種により適正な温度があり、スチーム 温度を下げ加熱すると、アクは取れ、旨みを凝縮し、甘味、香り、色艶などが良くなり、良い食感になります。 鮮度は今までよりも長く維持し、あくや生臭みを作る成分は比較的低温で蒸発放散し、美味しい香りの成分は、もう少し 高い温度で保持することも解り、特に野菜の美味しい香り、食にあり、野菜を食べる上で、低温スチームの加熱効果が 明らかになっています。 鮮度は時間経過で低下して行きますが、低温スチーム後は取り立ての鮮度を予想以上に持続させる事も判って来ました。しかし野菜に付着した土や汚れの問題は解決できず、事前に水洗いを当然としていました。 熱に弱いレタスや水菜、サラダ菜、三つ葉、香味野菜等では45℃〜55℃のスチーム加熱を行うと、生の食感より シャキシャキした食感は強く残り、香り、甘味は増し、生臭みも取れ、雑菌も減少し、美味しく食べる上で効果的です。 しかし汚れは取れません。そこで事前の水洗いを変更し、45℃〜55℃のお湯により、素早く洗い、それから同温の 低温スチームのテストを行う事とし、湯温を一定の50℃に設定し、各種の野菜洗浄テストを行っている内に、野菜の不思議な力や現象とお湯マジックに遭遇する事になりました。

2、50℃の不思議、お湯に耐える野菜、そのマジック現象

50℃のお湯に素早く野菜全体を湯に浸し、10秒から20秒間良く洗浄し、種類により2〜3分以内とし、そのときの湯温 が42〜3℃にならないように注意します。汚れは水に比べ良く落ちます。そして網〇に引き上げ、少し放置すれば水分は 乾き始めます。驚いた事に、しんなりした野菜も徐々に取り立てのようにシャキッとなり、色はよくなり、生臭みは消え、野菜のうまみも流出すること無く、より美味しく感じます。 日時の経過により鮮度の落ちた野菜も驚くほど、甦り、その後の 保存期間も飛躍的に延びます。野菜の洗浄は世界的に冷水で行う事を常識としています。 50℃のお湯で洗う効果や、取立ての鮮度を維持する事は知られていません。この方法はどなたでも温度計さえあれば 直ぐに試す事ができます。 例えばサラダに利用するベビーリーフ、水菜、カイワレ大根、イチゴ、バナナ、生花でも有効 なのです。日時が経過すると生臭みが生じる野菜、モヤシの場合も生臭みは殆ど取れ、汚れもよく取れます。 お湯を用意し、温度計で50℃にすればすぐに実験して確かめる事ができるのです。(もっと効果的な精密温度、時間があるかもしれません) 50℃のお湯に漬ける効果は野菜の細胞や成分に影響を与えます。 その分析として、

1)野菜の細胞を結合するペクチンは細分化し、弾力性を高める効果であることがわかってきました。

2)生物学ではHSP(ヒートシヨックプロテイン)研究が進んでいますが、同様の働き、つまり熱ショックにより 耐熱タンパクが野菜表面に生成し身を守る防御の効果ではないか

3)野菜は収穫後、保有成分を徐々に放散し乾燥を始めるが、水分蒸発を抑えるため表面の気孔は閉じた状態に なっている。熱ショックを与えると野菜表面の気孔は開き、そこから失われた水分を吸収し、収穫時の状態に戻る 現象が生じる。