スチーミングの熱伝達は、食物を蒸気で包み、表面は薄い水の被膜に覆われ温度上昇して行く。

水分蒸発はないが、素材に含まれる成分の内、揮発性の脂肪酸等は放散蒸発し、素材に含まれる自由水や低い温度で融解する脂肪分、水溶性タンパク等はドリップとして流出滴下する。素材の旨み、美味しさを作る多くの成分、特にタンパク質、脂肪分等、そして細胞間の結合水は可能な限り良質な状態に変性させ、ドリップの流出を防ぎ、閉じ込める。美味しさを阻害する成分、悪臭の原因を作る成分、消化吸収、栄養価の点から見てもマイナスとなる成分は抜けてくれたほうが良い事にある。この事は加熱温度が重要な意味を持っている事になる。

あらゆる素材には美味しさや消化吸収を阻害する成分が含まれている。あく、悪臭、ぬめりを生成する成分、揮発性の脂肪酸、肉、魚介に含む血合、自由水等がそれである。揮発性成分は熱により素材から放散する時に空気と結合し、あくに変わると考えられる。揮発放散した成分、特に高度不飽和脂肪酸は空気と結合し参加し易く、温度が高くなるほど酸素の付加量は増え過酸化物を作る。低温スチーミングは空気が残存するが、酸素の量は少なくなり、結合は少なく、あくの問題は殆ど考える必要が無くなる。程よいあくは美味しさを作る味の一部である事を実感する。

より良い、美味しい食物を調理するには、加熱法の再検討、見直しが必要であり低温スチーミングを必要とする原点がここにある。良い低温スチーミングをどうして作ったら良いのか!