一般的概念に、水蒸気は100℃から発生すると考えている方々が多い。

水蒸気は0℃の水からも発生する。0度の水蒸気は、絶対圧力0.006228/ 熱量597.50Kcal/Kg 比容量206.305/Kg

100度以下の温度による直接蒸気加熱を『低温蒸し』と呼ぶが、誤った意味に聞こえる場合があり、中温蒸しと呼ぶのが良いのではないかとする意見もある。現在行われている低温スチーミングと呼ぶ方法には3つの方法が採られている。

1.100℃以下の温度を純粋な蒸気だけで安定して作るには、蒸気空間の気圧を下げる必要があることが分かる(表2より)

従って装置には気圧を下げる減圧機器を取り付け減圧し、蒸気をコントロールし温度を一定にする。アメリカでも低温蒸しが注目され普及が始まり、この方式の装置が開発され販売している。この最大の問題点は、減圧のため内部の空気を吸引し続けるため、素材の香りの成分まで吸引してしまう事である。香りは美味しさの大きな要素である。

2.装置の中に蒸気を入れ、ファンで撹拌しながら供給蒸気量をコントロールすれば内部を任意の温度に一定する事が出来る。近年、ヨーロッパから導入されたスチームコンベクションがこの方式である。オーブンにスチームを入れ、撹拌しながら任意の温度にして低温スチーミングを行うとするものである。この方式の問題点は、当初あった空気もそのままに熱を撹拌するので空気温度は上がり水分を奪う現象が出てくる。もう1つの問題は高温空気は食材を強制的に酸化させ、特有の匂いが付く事である。調理のレベルは限られたものになる。食物をパックし加熱するのであればスチーム空間の空気は関係なく加熱する事が出来る。

3.日本で生まれた方法であるが、蒸気と空気の比重差を利用し、自然に100℃以下の低温のスチーム空間を作る方式である。蒸気を入れる空間の上部を塞ぎ、緩やかに蒸気を入れると空気は自然に下方に移行する。その原理を利用して、温度を一定にする。供給蒸気を穏やかに適切に注入し量をコントロールすれば安定した低温スチーム空間を作る事が出来る。原理、機械的構造もシンプルになり、スチーム空間に食材を下方から搬入するリフトアップ構造にすれば運転中の蒸気放散は全くなく、食材の出し入れの際に生じる蒸気の放散も極めて少なくなる。この方式はバッチ方式であっても必要温度になっている空間に搬入するため連続方式と同様な効率化が達成出来る。これは日本のセイロ蒸し技術を発展し開発された低温スチーミング技術であり、とくにトンネル型連続蒸し機の改良を進める段階に生まれたシステムである。実際にデリケートな各種の調理を行い比較を行って見ると、最も優れた低温スチーミングシステムは3、の方式であると考える。素材に対し、最も美味しくなる加熱法を追及していると、原点の食物を加熱する理由を改めて考えて見たくなる。