著者は「低温スチーミング技術」を専門とする極めて珍しい存在である。食品加工における熱技術を専門とし30年以上の経験を持つが、当初は石油ショックを契機とした省エネルギー活動を主体に取り組み、多くの食品分野の現場を見る機会を得た。

食品を加工する現場には熱水を利用した加工をするものが大変多く、農作物は洗浄し、ボイル加工を行い、加工品の殺菌工程に熱水を利用する等、水を利用した工程が多くある。熱利用を効率的にする最初の疑問は、「なぜ熱水加工なのか、なぜ水を使用しなければならないのか」と言うことであった。熱媒体である水をスチームに変更し、同じ温度の熱を与えるシステムにすれば、トータルで使用するエネルギーの節減が達成できる。加工品の品質(美味しさ)が向上し、エネルギーの驚異的な節減以上のメリットが生じたのである。茹でていた野菜をスチームで蒸すと驚くほど美味しくなり、さらに温度を下げると旨みが凝縮する現象に気がつくことになった。加工品が美味しくなることは売上げが伸びることにつながるのである。低温スチーム加工技術とはどんなものなのか、野菜を低温スチーム加工することで生じる効果、野菜を美味しく食べる方法の工夫をすれば野菜の消費拡大に期待できることなど、本稿では紹介したい。